ファッコ暫定まとめ2(だんだん短くなる)(sickoみたいね)

それもホックシールド先生が

褒め褒めコミュニケーションは、「友達沢山つくる」「敵を減らす」のに優れた方法ですが、一方で「良い友達と悪い友達」の区別がつきにくいシステムでもあります。
敵味方の峻別がつきにくいんですね。ファックコミュニケーションに比べて。
これは、女性コミュの中で、「友達沢山つくる」「敵を減らす」事が、「信頼できる友人のみと付き合う」よりも、利得が多かったことを意味しているわけですが。
理 由 が わ か ら な い

ファックコミュニケーションが男性コミュで主流な理由とか - pal-9999の日記

 そりゃもうid:torly:20070515#1179206416で引用した部分再びですよ? 褒めというか持ち上げコミュニケーションをするのが女らしいのです。一方で男がファッコミュに走るのは、貶しコミュが心地いいからでも褒めコミュが居心地悪いからでもなく、持ち上げコミュをすると女みたいで嫌だし、同性相手にそんなことをしていると周囲からゲイではないかと疑いをかけられそうだしで嫌だからでしょう。
g:髭暴 - 秘芸ちょう - ファックコミュニケーションてホモソーシャル内の会話に見える
 これは詳細は違うけど、出発点と部品が同じです。つまり、

  • ファッコミュは男らしさ。男らしい男はファッコミュすることになっている。
  • ファッコミュは男同士の友情を暖めあう手段。
  • ファッコミュって実はあんまり楽しくない。

ということです。
 同様に褒めコミュもおそらく、利益があるからやっているのではないでしょう。本来褒めコミュでは褒めコミュをしない人たちが得をしており、女が得をするとしたら、それは褒めコミュをしない人々からのフィードバックによるものだったのでしょう。つまり女が褒めコミュ改め他者を持ち上げるコミュニケーション(長い)を常態としていたら一体誰が得をするのか、何故男性ではなく女性なのか、そこから考えねばなりません。

「友達沢山つくる」「敵を減らす」の利点は、
1、多数決に強くなれる
2、人気がその集団内での地位を決定する場合に有効な地位を獲得できる
なんですが、女性コミュ内では、喧嘩が強い奴がボスになるのでなく、多数決や人気などで地位が決まるから、なのかな。まぁ、女性じゃないから、ここはよくわからんのですが。

ファックコミュニケーションが男性コミュで主流な理由とか - pal-9999の日記

 ここで多数決の例が出てきますが、人類史上、永らく女性は明文化された多数決法において選挙権を与えられずにいました。

しかし古代ギリシアの民主主義は各ポリスに限定された「自由市民」にのみ参政権を認めただけのものであった。例えば女性や奴隷は自由市民とは認められず、またギリシア人であっても他のポリスからの移住者には市民権が与えられることは少なかった。

民主主義 - Wikipedia

 ごく私的な集団内での話であっても、やはり多くの地域で判断力があるとされ、権力や財力と結び付けられていたのは男性性であり、女性ばかりの集まりはあくまで下位文化であったでしょう。これはこれで非常に意味のあることだったとする意見もありますが、いずれにせよ文化・時代によるばらつきが大きそうな部分なので言及しません。
 というか全体的にめんどくさいというか、これもまたこれだけで向こうの社会なんとか系の人なら1冊書けそうなので割愛します。パーツを教えてやるよ。後は自分で考えな。

  • 歴史上、民主政治不在の時代に名前を残した女性って? ただの作家とか踊り子とかは除く。
  • 旦那には離婚されるけど、血縁を大事にする風習がある限り息子は裏切りませんよ! 生まれなかった場合は知らん
  • 今でこそ政治家が利権とか予算の私物化とかすると怒られますが

 女性作家が血族政治の男同士ドロドロハァハァをネタにミリオンヒットということですか? わかりません><
[それなんていう][塩野七生]

持ち上げろ!

 よく考えたら、男性に血縁政治の利点はないと思いませんか? だってそうでしょう、俺神の声が聞こえたから!! とか、俺が一番為政者にふさわしいから!! とか適当にマッチポンプで権力の理由を後付けしてりゃよかったのに、血族で男だと自動的にライバルなんですよ? でもクーデターや侵略じゃない限り、自分も血族だから立場を受け継いだわけで、これを否定しちゃうと権力の正当性がなくなります。子供が生まれなかって権力欲しい奴らがぞろぞろ集まってきてuzeeee!! ってなるのは、一夫多妻にしてリスク分散すれば自分が不妊じゃない限りおkとして、兄弟争いは長男優先で済ませましょうか。でも、引継ぎのタイミングには皆悩んだみたいです。
 パターナリズムという言葉があります。文字通りの父権主義を超えて、血縁政治的なものの比喩になっているさまが面白かったので、リンク先はあえて英語版です。このパターナリズム的世界観に、祖父(引退した父親)はどのように位置付けられるのでしょうか? これもまたばらつきがありそうですが、これらの例に挙げられたイメージからの回答として、つまり父は死ぬまで父であり、死んでからも息子にとっては父でありつづけるということなのでしょう。父の居ない家庭ならとうの昔に自己判断している歳の息子も、父がいる限り、彼の意向を無視することは出来ません。自立した男になることを求められているとしても、それもまた父の意向に過ぎませんし、適切な時期に息子へ決断権を譲るのも父の適切な決断によるのでした。ホントジャングルは地獄だぜ。
 話がずれましたが、女性には何故持ち上げコミュニケーションが義務づけられていたのでしょうか? 実はすでにホックシールド先生が答えを出しています。

 そして、上流改装の頂点には、最高権力を持つ大物たちが座している。彼らは、自分たちの好みに応じて思い通りに設計した非公式な規則――部下たちは懸命にそれに従おうとする――を勝手に設定する権限を、当然のこととして行使する。何を愉快と感じ、何に対して敏感で、何に感謝し、よそ者に対してどれほど冷淡であるべきか、といったことは、彼らの直属の部下たちにとって公式な文化となる。権力を持たない者の個人的性癖は、こともなげに無視されてしまうが、権力者の見解は、単なる個人的耽溺異常のものである。それは、暗黙の感情規則を強制し部下たちを支配する、巧妙で強力な手法となるのである。

管理される心―感情が商品になるとき P.179

 ちょっとこれは戯画的な感じがしますけど、要は男尊女卑だったから女は男の機嫌を気にせねばならない一方、男は女の意向なんか気にせずに好きなだけお下品発言が出来たということです。褒めニケーションは元は男性の方を向いていたというか、まあ、女尊男卑だったら女性もファッコミし放題だったということですね。
 いくぜ駄目押し。

 感情管理は、下位の階級よりも、上位の階級の家庭生活や職場で盛んに行われている。(中略)しかしジェンダーという制度の中ではそれは逆である。底辺に位置する人々、つまり女性の間で感情管理が広く行われる社会的条件があり、しかもそれは、また別の仕方で行われている。
(中略)
 まず第一に、他の資源を持たないために、女性は自分の感情から作り出した資源を男性に贈り物として提供し、見返りに自分たちに不足している物質的資源を獲得している。(例えば1980年には男性の50パーセントが年間1万5000ドル以上を稼いでいるのに対して、女性ではわずかに6パーセントである。) *1
(中略)
 第三に、これはあまり気付かれない点だが、女性は一般的に従属的な立場に置かれているため、他人のいわれなき感情表出に対して「無防備」となりがちである。例えば女性の客室乗務員は、乗客の侮辱と罵倒の的になりやすいので、男性客室乗務員はしばしば、彼女らに対する根拠のない攻撃を処理するために呼び出されることになる。

同PP.186-188

 一連のやりとりの中では大野氏の5/29の意見に近い感じですね。
 ちなみに省略された第2・第4の条件では、ジェンダーで感情操作の重要度と要求される性質が違うと書かれています。えっ、女性が身を守ったり稼いだりするために感情作業が要るんじゃなかったの? って思うかもしれませんが、そこら辺はどっちが先か論じるのは無理というか、まああまり意味がありません。先ほどの血縁政治と父権・男権も同様です。性淘汰説と同じく、誰か巨悪が企んでこうなったというよりは、寿命・物資・経済・知識の兼ね合いでこの状態にはまり込んで以来長年釣り合っていて、これは駄目かも分からんねと思っても切り替えが効きづらいものだと思われます。

*1:引用者註: 原文では漢数字